2017年オンブズマン活動(2)

市長選について

昨年6月末に行われた市長選は、市政の私物化で当オンブズマンが監視を強めていた吉田市長が、自民が強烈に応援した上地前市議に敗れた。

しかし票数から見ると吉田市長に市民の批判が強まって敗れたと言うより、自民党あげての、組織固めが功を奏し、上地候補当選となった。と言うほかはない。

その票差、約1万2千。2013年の市長選では吉田元市長は1万1千票差で廣川氏を抑えたから、今回は全く逆の票差でリベンジされた。

選挙告示前、自民と公明によって上地支持のポスターが街中に貼り巡らされた。

こんな事は過去の市長選で一度もなかったことだ。

しかし昨年の市長選、市民は盛り上がっていなかったし、投票率から(13年より下がった)しても無党派層の動きはなかったし、何より自民系以外の市民の関心は低かった。といえる。

自民公明(とりわけ自民)の組織票をがっちり固め(自民は締め付け)た作戦に、希代の選挙上手、吉田元市長も及ばなかったわけだ。

吉田市長にしてみれば、安保体制も何ら批判せず、国には(安倍政権にも)逆らわずにいたのに「何で、こんなに自民が総掛かりで来るんだ」と思ったことだろう。

結局、進次郎票の取り合いでしかなかった

市長選は要するに、進次郎票内での票の取り合いにすぎなかった。

これまで吉田市長が2連勝できたのは、進次郎氏に入れていた有権者の5割ほどを、吉田市長が上手く取り込んでいたからだ。

09年市長選で蒲谷市長が敗れたのは、現職が余りに選挙向きでなく、4年あった1期目に日常活動の不足があった。また自民党(この時は純一郎議員時代)が吉田議員(当時)の選挙上手の凄さを侮っていたからだ。

もう一つの敗因は美術館建設(07年オープン)を巡って、沢田氏の後継とされた蒲谷市長への反発が進次郎(自民)支持層の多くにあり、その反発から吉田候補に入れたからである。

また13年の市長選で廣川氏は、直前まで吉田市長の副市長をしていたのに、急に現職批判をして辞職、立候補したから、対立候補としての大義が見いだせなかったことと、やはり選挙向きでなかったことも敗因だった。

しかし何よりの敗因は自民が、進次郎氏さえつれけば勝てる、と楽観視して、組織の締め付けをしなかったことだ。これで、進次郎ファンのB層選挙民と、建築関係の組織票が吉田市長に流れたからだ。

昨年は、この2回の敗戦原因(獅子身中の虫?)に、自民がようやく気がついた。

今回はかなり前から市長候補を探していたが見つからず、しようがなく昨年3月になって自民が、上地議員に頼んで立って貰ったわけだが、進次郎・小泉家のみでなく、安倍政権中枢が動いて組織の引き締めをした。安倍中枢の管官房長官や二階幹事長が動いているとの情報が伝わった。

上地議員は息子がテレビで売れてから、2回の市議選でトップ当選を果たしたが、市議選で得た票は7千票を超えていない。その十倍の得票は自民の引き締めと公明創価学会の協力によるものである。

ヨコスカ復活は意味不明

さて議員時代に7年付き合っていた者として、上地市長の掲げた公約は自民の影響を受けたと思わざるをえない。

ヨコスカ復活は吉田市長の「選ばれる町」同様に意味不明で、市民に何のメリットがあるのかイメージできない。今の産業構造で国道357の延伸で横須賀が豊かになるとも実感できない。

車の横須賀ナンバーは市民支持を得られず見送りとなったから、市民意識を何処まで汲んで、公約にしたのか疑問符がつく。

何より選挙戦で軍港都市の「業」である、横須賀の谷戸高台問題に一切触れていない事が、気になる。

横須賀の車の入らない谷戸高台の土地家は、資産価値はゼロまたは100万円以下だ。市民の資産が下落かゼロ化しているのに、対応なしでは人口流出は加速する。

同時に多死社会に於いて、車の入らない谷戸高台に、多くの高齢者が住む横須賀特有の課題がある。谷戸高台にある数万の家屋の空き屋化は目の前に迫っている。2030年をピークにする、横須賀の社会問題は、間もなく吹き出す。

基礎自治体は先ず住民の暮らしを守る事が第一である。住民が困る弱ることに対して手を打つことが第一の仕事であるし、それなくして市民の利益はない。自治体の行政は、税金の応益で賄う、行政サービスであるからだ。

また、まさに自治論で、横須賀市に住む市民同士が助け合う関係、を構築するなどせねばならないのだ。しかしここを三候補とも言わなかった。

本来は自治を意識して自治体主権論に立ち、財源の移譲、課税自主権の付与を国に求める必要があるが、ここまで中央集権化する安倍自民政権のバックアップで当選したのだから、こういう要求はできるか、懸念される。

馴れ合い議会にならぬ様、監視の必要性 

首長や市をチエックする議会にも自治、分権(地域主権)論を地方自治の原点と知って、活動する議員は物凄く少なくなっている。

今度の市長選で、市議会は定数41名中30名が上地支持議員となるから、地方議会にあってはならない「与党」意識が甦り、馴れ合い議会とならぬように、警戒を厳にしないといけない。

なお今年の予算議会で施政方針演説が行われるから、上地カラーが出ることになる。批判、評価は、又その時にしたいと思う。

一柳 洋