百条委審査に関する議会への辛口評価

     百条委審査に関する議会への辛口評価

 昨年4月まで24年間市議をやってきた者として、昨年から1年半 かけてやってきた横須賀市議会 初の百条委員会の審査について厳しい評価を述べたい。
 今回取り上げたいのは議員、会派の追及力についてである。
 新聞は議会の評価はしないからオンブズマンとして議員、会派、総じて議会の追及力を俎上に上げ  る。
 
■  横須賀市議会初の百条委

 昨2015年6月議会で設置された百条委(地方自治法第100条による特別委員会)の委員構成は 大会派順の「慣例」から自民3、公明2、無所属みらい2、市政同友会、研政、共産が1の10名で
 構成された。
 それに無会派から青木、上地両氏が委員外議員(オブザーバー)として参加が認められた。
 
 そして自公で正副委員長を取った。
 この慣例に基づく委員の割り振りも限界を示す要因だった。
 百条委という滅多に構成されない特別委員会なのだから定数を決めたら、議員の能力評価を重視して 従来の会派主義(各会派数の人数割り)を取らずに無会派委員も正規委員にした方が良かった(これ は審査していてすぐに明らかになった)

 百条委にかけられた案件は3件であったが、一つ目の日本丸の久里浜寄港については、市長が答弁で ついた「嘘」をただ市長のメンツを守る為に組織ぐるみで庇ったという構図であり、吉田市長らしい 実に下らない内容であった。

 今年は米大統領選と茶番小池劇場で○○ファーストが流行ったが、吉田市長は選挙ファーストである。
 常に選挙のことしか考えていないから単に、地元と称している久里浜の町内会連の歓心を買うために 久里浜港に付けたかっただけだ。
 
■  職員の品性と劣化

 私の希望で久里浜港に着けて貰ったといえば、明白な我田引水になるから、まさかバレはしないと  思って「航海訓練所の希望で久里浜港となった」と、でまかせ答弁をしたまでだ。
 だから市長が議会答弁の不誠実さを早期に謝ってしまえば済んだことである。
 
 市長の「出まかせ」答弁の口裏を合わせられて、百条委に何度に呼ばれた港湾部職員の心境いかばか りかと思った。
 しかし冗談じゃないと尻をまくる職員も現れなかった。
 御身大切で退職金もパーにする事なく定年退職して、自分の生活を大切にしたい(公務員は全体の奉 仕者なんて誰が決めたんだと言う態度)
 そして市長、副市長に逆らうことなく、退職後は外郭団体等へのミニ天下りを期待する連中ばかりか と思われて非常に情けなかった。

■  戦い方を知らない議会

 だから、議会はこの件はさっさと問責決議して結論付けして、市長と昵懇の奥村課長の恣意的採用と ポートマーケットの不明朗な業者選定と法律違反の営業をやらせていた事を中心に追及すれば良かっ た。

 これが出来なかったのは委員会指揮(進行)の拙さである。
 要するに市長追及をどうメリハリ付けてやるか描けておらず、結果この百条委はついに市民の共感は 得らなかった。

 この委員会進行の問題は、これまでの市長についていれば良かった「ありもしない与党ボケ」を長年 やってきたツケとも言える。
 議会と行政は機関対立主議で議会は長に対しては是々非々で対応し、要望、要求は議会論議の中で行 うが身についていなかった結果だったと評価せざるを得ない。

 だから百条委を一般委員会として勘違いして、ダラダラ審査をして告発決議までに1年以上を要し  た。

 百条委の目的は「普通地方公共団体の議会は、当該普通地方公共団体の事務に関する調査を行い、選 挙人その他の関係人の出頭及び証言並びに記録の提出を請求することができる」と規定されている。

 通常の委員会審査と違って参考人から聴取するだけでなく証人喚問も出来る、ある程度の強制権が
 あるのが特長だ。
 しかし民事訴訟法の適用を受け、証人の諸権利は保護されるから司直のような捜査権はない。
 だから違法行為を立証するにはかなり困難性がある。

 また明らかに地方公務員法違反や贈収賄のような刑事告発事件ならば百条委開催よりも、直接告発の 方が早い(これは議員でなくても市民でも出来る)
 
 百条委はあくまで議会の権能として「役所の事務に関する調査を行う」ことで、これに関連する長
 及び職員を調べ、今回のように民間業者も調査対象になるのなら、民間人も参考人は証人となるが、 あくまで取り調べではないから限界がある。

 だから「自白」や、明白な物証でも出ない限りは「犯罪」として立証するのは困難である。
 要するにある程度調査し、証人喚問もしたら、今回のように議決して偽証告発をして後は司直の判断 に任せるしか手はない。
 そこでようやく10月議会で地検に告発となった。
なお告発を地検が受理したからとしてそれは=起訴ではない。
 いずれにしても地検が起訴不起訴の判断は選挙前(来年6月末)にされないと意味がない。

■ 気迫が見られない会派と議員

 ダラダラ審査と気迫の無い委員が半分以上を占め、会派「無所属みらい」の2人は市長支持会派だか ら追及などしない、緊張感のない百条委には途中から傍聴に行くのはやめた。

 自ら資料を発掘し、調べ上げて追及したのはむしろ、正規な委員では無く無会派議員の委員外議員で あったことも象徴的であった。
 
 自民党と公明党は一生懸命追及しようとしていたが、それでも追及力や意即妙な追及に限界が出て
 市長に足下を見られてしまった場面もあった。

 しかし何より問題と感じたのは市政同友会以下3会派の質問内容、要するに追及の仕方と迫力のなさ であった。
 元社会党だった研政委員と、そして共産も独自に何か調べてきて追及することもなく、追及は非常に 甘かった。
 
 更に共産は告発にも賛成しなかった事には正直驚いた。
 吉田市長の日頃の共産党に対する木で鼻を括った答弁ぶりからして、もっと追及するかと思ったが、 それもなく、別に意趣返しで告発せよと言うのではないが、市長の行為を司直の判断を仰ぐという
 態度を取らなかったことが不思議である。
 共産党の「理性的」対応は市長から更に軽く見られることになると思う。

■  市政の私物化と厳しい議会態度の必要性

 市長の情実人事は昨年3月議会で私が奥村課長の恣意的採用を明らかにしたのがきっかけだが、その 時、研政と共産委員には総務委員会で協力して追及しようと呼び掛けたが、厳しい追及はなく私が
 市長を委員会に呼んでも、彼らは市長に対して質問もしなかったのである。

 この様なお人好しな追及では「選挙の達人」(それしかない男)吉田市長を追い込めるわけはない
 のである。

市議は二元代表の議決機関である議会を構成する者として、長に対しては機関対立主議で緊張感ある 論議の中で議員の意思を実現することである。
 議員は市民代表というがその意味するところは、主権者国民の代表として議場に於いて信託された
 主権の行使をすると言うことなのである。
 市民に代わりに主権の行使をするという厳粛な行為の意味を考えて日々精進し、まさに言論の府の
 一員として市民から評価される議員に、そして議会にして欲しいのである。

横須賀市民オンブズマン代表 一柳 洋