情実採用職員の処遇問題

一昨年に設置された市議会百条委では3件の問題が審査され、
うち市長の虚偽答弁の日本丸誘致と、市全額出資法人が建築基準法に違反した
状態でポートマーケット内でバーベキュー施設を営業していた問題では、事業に
市長の支援者が絡むことから「公私混同」の2件については告発(不起訴処分)
となった。

しかし都市イメージ創造発信担当課長に交友関係にある奥村氏を採用した件に
ついては市長の人事権により告発には至らなかった。

今年6月の市長選で吉田市長は敗れ上地市長となった。

上地市長は奥村課長について地公法等の関係から、前任市長の「ムリ筋」採用について、
語っていないが、前任市長の「情実人事」に対してどうするのか、注目される。

もっとも、就任早々に降格や配置転換をすれば、公平委員会に申し立て、場合によっては

訴訟にも発展する可能性もあるので、常識的には来年度の定期人事異動の際に、
前市長の抽象的政策の 「都市イメージ創造発信担当課」を、そのまま置くのか?

と言うことを含め、何らかの判断が下されることになるのだろう。

しかし、その際は、前任者の行為が百条委にも取り上げられたのであるから、
主権者である市民、そして試験を受けて採用されている職員にも説明する必要があるだろう。

もしそれが無い場合は当オンブズマンとしても対応する必要があると思う。

なお百条委でどのような結論が出たか、百条委員長の議会最終報告を以下に貼り付けます。

記事 一柳 洋

百条委の報告

任期の定めのない職員としての採用(平成27年5月)

(ア)不明瞭な、採用形態の変遷及び競争試験の実施

都市イメージ創造発信担当課長を公募するにあたって、同課が所属する政策推進部
及び人事当局は任期付職員の採用として、検討を行っていた。
しかし、市長から「不安定な雇用状況におかれる任期付職員よりも、任期の定めのない
一般職員として採用することが優秀な人材の獲得につながる」との方針が示され、
任期の定めのない職員を採用することとなった。

このことは、任期付職員では優秀な人材を得られないとの認識を示したこととなるが、
現実には、スペシャリストとして高く評価する当該職員を任期付職員で雇用しているわけで、
何をもって「優秀な人材を獲得できない」というのか、矛盾しており、任期に定めのない
職員として採用する合理的な理由が不明確である。

また、関連法の解釈で、任期付職員の再任用を容認しているにもかかわらず、人事当局者は
そのことを知らなかった旨の認識を供述している。このことは、人事当局者として、
当初は、当該職員以外の人材を任期付職員として採用することを企図したにもかかわらず、
市長方針に従う形で、当該職員採用の可能性のある競争試験の実施に至り、結果として、
当該職員の雇用を継続することとなった。

さらに、本調査の結果、競争試験の実施要領が存在しないことも判明した。
競争試験を実施するうえで、筆記試験及び面接試験の配点や、その評価配分の基準、
そして面接試験における受験者順番の決定要領などを事前に考案して、試験は公明正大に
実施されるべきである。

しかし、その実施要領が存在しないことは、すなわち試験結果によって事務的に合否を
操作できる可能性もあり、公正性に疑問がある。

これは要するに、採用形態の変遷及び競争試験の実施要領に不明瞭さが認められる。

(イ)市長が面接官を担当することによる公正性の欠如

職員採用試験の2次試験(面接試験)において、市長は面接官の一人として面接試験を
担当した。関係者の供述は「これまでも特別な採用においては市長が面接官を行ってきた。
今回は人事当局から市長が面接官に加わることを提案した」とのことである。

しかし、任命権者である市長が、副市長や部長の適正な評価に影響を及ぼすおそれがある形で
面接を担当することは、適切なこととは言えない。
また、本試験の受験者に、かつて市長自ら推薦して任期付職員として採用した当該職員が
含まれていること、なおかつトップダウンで当該職員の任期を更新した事実を勘案すると、
情実人事との疑いを持たれる可能性が非常に高い。

よって、市長が面接官を担当することは、部下の進言とはいえ回避すべきであり、
試験の公正性及び競争性を著しく損ねる軽率な行為で、試験そのものが当該職員の採用ありき、
いわゆる「出来レース」、と判断する。

調査事項の総括

一連の人事権行使における倫理観の欠如に対する指摘

本件「一般職の任期付職員(一般事務職)の任用及び任期後の採用問題」を総括するならば、
当事者の意図や思惑の実際とは別として、

①市長と当該職員が旧知の友人関係にあること、

②市長が当該職員を本市の職員として任用することを推薦した事実、

③当該任用にあたっての選考が必ずしも十分なものとは言えないこと、

④その後の任期更新が直属の上司による人事評価の確認もなく、市長のトップダウンで
行われたこと、

⑤当該職員の任期満了時における職員補充のあり方として、任期の定めのない職員として
採用することとした理由に矛盾があること、

⑥以上の事実関係の下で当該職員が参加する採用試験に、あえて市長が面接官を担当した
ことから、一連の過程は、公正さを失った情実人事であると、市民に受け止められる
可能性がある。

そのことは、吉田市長自らが定めた「市長及び副市長の服務及び倫理に関する規範」
における「市長等は、全体の奉仕者として人格と倫理の向上に努め、その職務に関して
市民の疑惑及び不信を招くような行為をしてはならない」ということにも
抵触することとなる。

よって、これら人事権行使の問題点は、市の人事行政、さらにはそのような人事を経て
任用・異動している職員によって担われている市政全般への信頼を、著しく失墜させる
ことにもつながる行為であったと、指摘せざるを得ない。